「ローマ人の物語 パクス・ロマーナ」(下) 塩野七生 (新潮文庫)
2004年 11月 03日
(上・中・下3巻まとめての感想はこちら)
ティベリウスに離反されてしまったアウグストゥスはアグリッパと娘ユリアの間に出来た孫たちに益々傾倒して行きます。・・・と言っても、彼らはまだ十代前半から半ばなのですが。彼らを目立たせようと<ユヴェントゥス>という肉体と精神の鍛錬を目的とした少年組織を作り、彼らをそのリーダーにします。サッカーの名門<ユベントス>のチーム名はここから来ているのだとか。ムッソリーニも同様の組織を作り、それを真似してヒトラーが作ったのが<ヒトラー・ユーゲント>だそうで・・・。
それはともかく、晩年のアウグストゥスは哀れです。
どうしても自分の血を受け継いだ者に帝位を譲りたいと固執します。ところが、孫たちはことごとく彼の期待を裏切ります。男の子は早死にしたり、気が狂ってしまったり。女の子は身持ちが悪く、アウグストゥスが自ら立案した「婚外交渉罪法」に引っ掛かる始末。
属州では反乱が起きてしまいます。
結局はティベリウス以外に後を託せる者も無く、その頃にはティベリウスを心底愛し頼って、彼を後継者に定めて死んで行きます。
義父カエサルに比べれば彼は凡人です。・・・というか、普通の人間です。(勿論、非常に有能ではありますが。)感情はあまり表に出さなかったようですが、晩年はかなり人間味が感じられます。だからこそ、哀れにも思うわけで、カエサルに対しては、腹心の部下に裏切られようが、暗殺されようが、哀れは感じません。それは彼があまりに超人的だから・・・。
そんなカエサルの存在がアウグストゥスには一生重くのしかかっていたような気がします。彼から託された事を何とか成就させようとアウグストゥスは必死だったと思います。
食えない若者と感じていましたが、実は非常に律儀で結構小心者だったのかも・・・。ご苦労様でした・・・ホント、そんな感じです。
TBしています:
ローマ人の物語~パクス・ロマーナ(Pebble in the Blog様)
本: ローマ人の物語 14~16 パクス・ロマーナ[上][中][下](Pocket Warmer様)
「ローマ人の物語 パクス・ロマーナ」 塩野七生 (アジ子のアジは鯵ではない様)
by yuiga28
| 2004-11-03 03:06
| Book 歴史