「ローマ人の物語 パクス・ロマーナ」(中) 塩野七生 (新潮文庫)
2004年 11月 02日
歴代のローマの勇将が手を付けかね、クラッスス、アントニウスが大敗を喫し、カエサルは遠征出発直前に凶刃に倒れ・・・と、ローマにとって悲願ともなっているパルティア問題を外交で片付けたアウグストゥスの統治中期(45歳~57歳まで)が語られます。
相変わらず慎重に時間を掛けて改革を推し進めて行くアウグストゥス。彼の施政に限ったことではないですが、2000年も前にこれほどの政治や行政のシステムが整っていたのにはつくづく驚かされます。その中でも更に革新的な改革を行ったのですが、カエサルとは違い、ゆっくりと時間を掛け、じわじわと推し進められているために、大変革とは受け取られません。それが彼の意図したところです。反感は出来るだけ買わない・・・カエサルのようなカリスマが無いと自覚しているアウグストゥスならではのやり方のようです。
19歳で表舞台に立たされたアウグストゥスも50代の半ばになり、片腕と頼んでいたアグリッパやマエケナスに先立たれてしまいます。2人の良き相談役を亡くした彼はある欠点を露呈させてしまいます。
妻の連れ子で、軍事的な面で大きな力になっていたティベリウス(後の二代皇帝)に背かれ、引退されてしまいます。アウグストゥスの苦手だった軍事を一手に引き受けてくれていたアグリッパが亡くなった後で、しかも、兄と同様かそれ以上に有能だったティベリウスの弟ドゥルーススにも死なれたところでの彼の引退(離反)は大打撃です。
その原因は、軍事に疎く戦場経験も殆どないアウグストゥスが、ティベリウスの豊富な戦場経験が言わせた進言をはねつけたからだそうです。アグリッパが生きていたら、こんな衝突は起こらなかったはずです。
そして、著者曰く・・・
アウグストゥスは政治的な人間の心理には精通していても、個人的な心理に疎かった。
それも一つの原因だと言います。アウグストゥスとティベリウスには心情的な確執があったと。そして、そんな問題に有益なアドバイスをしてくれそうなマエケナスも既に亡く・・・。
確かに個人的な心理に疎いと思わせられる政策を彼は打ち立てています。
少子化対策とはいえ、有夫の婦人と密通(つまり、不倫)を禁じたり、独身でいることにペナルティーを課したりて、個人的な生活にまで法律を持ち込みます。「”不倫の達人”であったカエサルが、天上界で大笑いしたに違いない。」と著者は書いていますが、大笑いではなく、大いに危惧したのでは、と思ってしまいました。「そんな事では人の心は掴めないぞ!」とカエサルなら言いそうに思います。
”第一人者”になって以来、最大の苦境(軍事を任せられる人材がいない!)に立たされたアウグストゥス。この局面をどう切り抜けるのでしょうか・・・。
相変わらず慎重に時間を掛けて改革を推し進めて行くアウグストゥス。彼の施政に限ったことではないですが、2000年も前にこれほどの政治や行政のシステムが整っていたのにはつくづく驚かされます。その中でも更に革新的な改革を行ったのですが、カエサルとは違い、ゆっくりと時間を掛け、じわじわと推し進められているために、大変革とは受け取られません。それが彼の意図したところです。反感は出来るだけ買わない・・・カエサルのようなカリスマが無いと自覚しているアウグストゥスならではのやり方のようです。
19歳で表舞台に立たされたアウグストゥスも50代の半ばになり、片腕と頼んでいたアグリッパやマエケナスに先立たれてしまいます。2人の良き相談役を亡くした彼はある欠点を露呈させてしまいます。
妻の連れ子で、軍事的な面で大きな力になっていたティベリウス(後の二代皇帝)に背かれ、引退されてしまいます。アウグストゥスの苦手だった軍事を一手に引き受けてくれていたアグリッパが亡くなった後で、しかも、兄と同様かそれ以上に有能だったティベリウスの弟ドゥルーススにも死なれたところでの彼の引退(離反)は大打撃です。
その原因は、軍事に疎く戦場経験も殆どないアウグストゥスが、ティベリウスの豊富な戦場経験が言わせた進言をはねつけたからだそうです。アグリッパが生きていたら、こんな衝突は起こらなかったはずです。
そして、著者曰く・・・
アウグストゥスは政治的な人間の心理には精通していても、個人的な心理に疎かった。
それも一つの原因だと言います。アウグストゥスとティベリウスには心情的な確執があったと。そして、そんな問題に有益なアドバイスをしてくれそうなマエケナスも既に亡く・・・。
確かに個人的な心理に疎いと思わせられる政策を彼は打ち立てています。
少子化対策とはいえ、有夫の婦人と密通(つまり、不倫)を禁じたり、独身でいることにペナルティーを課したりて、個人的な生活にまで法律を持ち込みます。「”不倫の達人”であったカエサルが、天上界で大笑いしたに違いない。」と著者は書いていますが、大笑いではなく、大いに危惧したのでは、と思ってしまいました。「そんな事では人の心は掴めないぞ!」とカエサルなら言いそうに思います。
”第一人者”になって以来、最大の苦境(軍事を任せられる人材がいない!)に立たされたアウグストゥス。この局面をどう切り抜けるのでしょうか・・・。
by yuiga28
| 2004-11-02 14:36
| Book 歴史