「非道、行ずべからず」・・・ミステリーの進歩を実感!
2006年 02月 02日
「非道、行ずべからず」 松井今朝子 集英社文庫   (詳しい感想はこちら)
基本的には、ミステリーと言うのは謎と謎解きのために存在する物語で、だからその謎と謎解きが良く出来ていれば良く出来たミステリーと言うことになるんだと思います。
例えば、エラリー・クイーンの国名シリーズなんかはその良い例でしょう。<読者への挑戦状>があって、フェア・プレイに徹していて・・・、まさしく純粋に謎と謎解きのために存在するストーリーの典型ですよね。
もともとパズル好きだったので、初めて『ローマ帽子の謎』を読んだ時には狂喜しました。長編小説1冊が丸ごとパズルなんですもの!
この長い長い問題文を持ったパズルに次々と挑戦して行くのが楽しくて仕方ありませんでした。
そう、本格パズルモノと言われるミステリーって、小説と言うよりパズルの問題文ていう感じがします。
だから、いくつもいくつも読んでいると面白さよりも味気なさを感じるようになって来ちゃって…。
すると、巧い具合にエラリー・クイーンは、ご本人たちもこちらと同じように感じたのか、<ライツヴィル・シリーズ>を書き出すんですよね。
この架空の町ライツヴィルを舞台にした一連の作品は<国名シリーズ>に比べるとパズル的な要素が薄くなり、叙情的な要素が加わって来ます。探偵エラリーにも人間臭さが出て来ます。
味気ないパズルの問題文に食傷気味なところで読むとなかなか新鮮でした。
その頃から段々と推理モノに謎解き以外の要素を求めるようになって来て、今度はドロシー・L・セイヤーズにハマりました。
特に<ピーター卿シリーズ>の長編第8弾と第9弾の『殺人は広告する』と『ナイン・テイラーズ』が大のお気に入りに…。
それぞれ、当時の広告業界の裏側とクリケット、フェン地方の雄大な景色と大洪水の様に転座鳴鐘と言った謎解き以外にも興味深い要素がぎっしりと詰め込まれていて、同じ本格モノでも単なるパズルとは一線を隔していました。
これらはみんな1930年代の欧米のミステリー黄金期に書かれたものですが、その頃のものに比べると最近のミステリーは様々な方向に発展して実に多彩ですね。
この『非道、行ずべからず』は時代ミステリーに分類されるんでしょうけど、江戸時代の芝居(歌舞伎)の裏側と芝居者(歌舞伎関係者)の業の深さや彼ら特有の価値観を鮮やかに描き出していて、”江戸時代の歌舞伎”と言う興味だけで読んでも充分満足出来る作品になっています。
でも、殺人事件とそれにまつわる謎が存在しなければ、ここまで鮮やかにこの世界を描くことは出来なかっただろうと思われるストーリーなんです。
謎解きと歌舞伎が巧く融合して、ミステリーの枠を超えた心を揺さぶられる名作になっています。
こんな作品を読むと、ミステリーの世界も進歩したんだなぁとつくづく思わされます。
基本的には、ミステリーと言うのは謎と謎解きのために存在する物語で、だからその謎と謎解きが良く出来ていれば良く出来たミステリーと言うことになるんだと思います。
例えば、エラリー・クイーンの国名シリーズなんかはその良い例でしょう。<読者への挑戦状>があって、フェア・プレイに徹していて・・・、まさしく純粋に謎と謎解きのために存在するストーリーの典型ですよね。
もともとパズル好きだったので、初めて『ローマ帽子の謎』を読んだ時には狂喜しました。長編小説1冊が丸ごとパズルなんですもの!
この長い長い問題文を持ったパズルに次々と挑戦して行くのが楽しくて仕方ありませんでした。
そう、本格パズルモノと言われるミステリーって、小説と言うよりパズルの問題文ていう感じがします。
だから、いくつもいくつも読んでいると面白さよりも味気なさを感じるようになって来ちゃって…。
すると、巧い具合にエラリー・クイーンは、ご本人たちもこちらと同じように感じたのか、<ライツヴィル・シリーズ>を書き出すんですよね。
この架空の町ライツヴィルを舞台にした一連の作品は<国名シリーズ>に比べるとパズル的な要素が薄くなり、叙情的な要素が加わって来ます。探偵エラリーにも人間臭さが出て来ます。
味気ないパズルの問題文に食傷気味なところで読むとなかなか新鮮でした。
その頃から段々と推理モノに謎解き以外の要素を求めるようになって来て、今度はドロシー・L・セイヤーズにハマりました。
特に<ピーター卿シリーズ>の長編第8弾と第9弾の『殺人は広告する』と『ナイン・テイラーズ』が大のお気に入りに…。
それぞれ、当時の広告業界の裏側とクリケット、フェン地方の雄大な景色と大洪水の様に転座鳴鐘と言った謎解き以外にも興味深い要素がぎっしりと詰め込まれていて、同じ本格モノでも単なるパズルとは一線を隔していました。
これらはみんな1930年代の欧米のミステリー黄金期に書かれたものですが、その頃のものに比べると最近のミステリーは様々な方向に発展して実に多彩ですね。
この『非道、行ずべからず』は時代ミステリーに分類されるんでしょうけど、江戸時代の芝居(歌舞伎)の裏側と芝居者(歌舞伎関係者)の業の深さや彼ら特有の価値観を鮮やかに描き出していて、”江戸時代の歌舞伎”と言う興味だけで読んでも充分満足出来る作品になっています。
でも、殺人事件とそれにまつわる謎が存在しなければ、ここまで鮮やかにこの世界を描くことは出来なかっただろうと思われるストーリーなんです。
謎解きと歌舞伎が巧く融合して、ミステリーの枠を超えた心を揺さぶられる名作になっています。
こんな作品を読むと、ミステリーの世界も進歩したんだなぁとつくづく思わされます。
by yuiga28
| 2006-02-02 17:50
| Book ミステリー