「花闇」 皆川博子 集英社文庫
2005年 07月 28日
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幕末から明治初期に掛けて一世を風靡した女形・三代目澤村田之助の34年という短い一生を描いた作品。
田之助は脱疽という病で両手足を切断してもまだ舞台に立ったという驚くべき役者。
見世物として好奇の目で見られることを覚悟の上で、それを乗り越えて”芸”を見せようとする田之助。その凄まじいまでの役者魂には打たれるが、天性の才能と美貌に恵まれた役者が文字通り手足をもぎ取られて行くさまに美を見出しているのが皆川作品ならではの読みどころ。
その皆川博子の美学の先駆者とも言える狂言作者・河竹黙阿弥(作中では河竹新七として登場)や<無残絵>で知られる浮世絵師・月岡芳年らの登場で、更にその美学は強調されている。
こんな皆川ワールドそのものとも言えそうな生を実際に生きた役者がいたことに改めて驚かされる。
田之助本人にとっては不本意な、運命を呪いたくなるような末期だったろうが、彼の生は無残に終わるからこそ見事に完結し、一つの美として昇華したとも思える。
こんなことを書くととても救いの無さそうな作品に思えるが、読後感は悪くない。
多くの皆川作品と同様に、一抹の哀しさを湛えながらも何故か明るい物語の終焉は爽やかでさえある。
TBしています:
『花闇』 伝説の女形(時代小説が大好き様)
幕末から明治初期に掛けて一世を風靡した女形・三代目澤村田之助の34年という短い一生を描いた作品。
田之助は脱疽という病で両手足を切断してもまだ舞台に立ったという驚くべき役者。
見世物として好奇の目で見られることを覚悟の上で、それを乗り越えて”芸”を見せようとする田之助。その凄まじいまでの役者魂には打たれるが、天性の才能と美貌に恵まれた役者が文字通り手足をもぎ取られて行くさまに美を見出しているのが皆川作品ならではの読みどころ。
その皆川博子の美学の先駆者とも言える狂言作者・河竹黙阿弥(作中では河竹新七として登場)や<無残絵>で知られる浮世絵師・月岡芳年らの登場で、更にその美学は強調されている。
こんな皆川ワールドそのものとも言えそうな生を実際に生きた役者がいたことに改めて驚かされる。
田之助本人にとっては不本意な、運命を呪いたくなるような末期だったろうが、彼の生は無残に終わるからこそ見事に完結し、一つの美として昇華したとも思える。
こんなことを書くととても救いの無さそうな作品に思えるが、読後感は悪くない。
多くの皆川作品と同様に、一抹の哀しさを湛えながらも何故か明るい物語の終焉は爽やかでさえある。
TBしています:
『花闇』 伝説の女形(時代小説が大好き様)
by yuiga28
| 2005-07-28 23:55
| Book 歴史