「冬の旅人」(上・下) 皆川博子 講談社文庫
2005年 04月 26日
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帝政末期からロシア革命にかけて、聖像画を学ぶためにロシアに渡った17歳の少女川江環(露西亜での通称:タマーラ)の物語。修道院付属の女学院からの脱走、猥雑な貧民街から西シベリアの流刑地へ、そして皇帝の一家と係わりを持つようになり革命の渦に巻き込まれて行く・・・。という波乱万丈の半生を描いた歴史大河ロマン。
女学院の寄宿舎の閉塞感と妖しさは「半身」(サラ・ウォーターズ:著)を彷彿とさせる。そこからの脱走後の展開は「アンジェリク」(ゴロン夫妻:著)の「はだしの女侯爵」編に良く似ている。しかし、これらの2作品との決定的な違いは非常に内省的だということ。主人公のタマーラは自分の性的嗜好に問題を感じ、狂気に陥ることを恐れている。そうした精神状態と絵を描くことへの欲求が連動しているのは非常に面白い。そしてそんなタマーラの魂の彷徨とともに、タマーラ自身も彷徨するのである。
伝奇モノが外向的で華やかなのに対して、こちらは内向的だ。抑制の効いた文章で描かれた物語に華やかさはない。しかし、ストーリー自体は非常にドラマチック。前半少々停滞している感じでもどかしいが、後半からは引き込まれるように読んでしまった。
帝政末期からロシア革命にかけて、聖像画を学ぶためにロシアに渡った17歳の少女川江環(露西亜での通称:タマーラ)の物語。修道院付属の女学院からの脱走、猥雑な貧民街から西シベリアの流刑地へ、そして皇帝の一家と係わりを持つようになり革命の渦に巻き込まれて行く・・・。という波乱万丈の半生を描いた歴史大河ロマン。
女学院の寄宿舎の閉塞感と妖しさは「半身」(サラ・ウォーターズ:著)を彷彿とさせる。そこからの脱走後の展開は「アンジェリク」(ゴロン夫妻:著)の「はだしの女侯爵」編に良く似ている。しかし、これらの2作品との決定的な違いは非常に内省的だということ。主人公のタマーラは自分の性的嗜好に問題を感じ、狂気に陥ることを恐れている。そうした精神状態と絵を描くことへの欲求が連動しているのは非常に面白い。そしてそんなタマーラの魂の彷徨とともに、タマーラ自身も彷徨するのである。
伝奇モノが外向的で華やかなのに対して、こちらは内向的だ。抑制の効いた文章で描かれた物語に華やかさはない。しかし、ストーリー自体は非常にドラマチック。前半少々停滞している感じでもどかしいが、後半からは引き込まれるように読んでしまった。
by yuiga28
| 2005-04-26 19:11
| Book 歴史