「凍りついた香り」 小川洋子 幻冬舎文庫
2005年 01月 27日
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小川洋子の作品は『博士の愛した数式』『沈黙博物館』『偶然の祝福』についで4冊目だが、これが一番好きかも。
何の前触れもなく恋人に自殺され、理由がわからないばかりでなく、気がつけば恋人が調香師だという以外何も知らない涼子。自殺の動機よりも何よりも、彼について知りたい! そんな、涼子と同じ気持ちでグングン読んでしまった。
ファンタジックな場面もあるが、それがとても印象的で良かった。珍しく素直に読めた。涼子の心理には影響大なのだが、事実関係がそれに左右されていないのもいい。
プラハで涼子に付いたガイドの青年・ジェニャック。彼の存在が凄く良い。何の手違いか、ガイドのくせに日本語も英語も話せず、涼子とは全く会話が成立しない。その上、”リョウコ”という発音すら覚えられず「リリ」と彼女のことを呼ぶ。シャイだしちょっと頼りない感じなのだが、誠実で温かくて、涼子だけでなくこちらまでもホッとさせてくれる存在なのだ。
ラストはとても地味だ。
でも、澱のように物語の根底にいつもたゆたっていた冷気が、一気に温かい空気に払拭されるような、そんな感動的で余韻の残るラストになっている。
この作品でも<数式>や<数学>が重要な要素になっている。それと、亡き息子が獲得した数々のトロフィーに異常なほど執着する母親。これらは、『博士の愛した数式』や『沈黙博物館』のモチーフに通じているようだ。
どうやらこの作品は、後の小川作品の原点と言って良さそうに思う。
小川洋子の作品は『博士の愛した数式』『沈黙博物館』『偶然の祝福』についで4冊目だが、これが一番好きかも。
何の前触れもなく恋人に自殺され、理由がわからないばかりでなく、気がつけば恋人が調香師だという以外何も知らない涼子。自殺の動機よりも何よりも、彼について知りたい! そんな、涼子と同じ気持ちでグングン読んでしまった。
ファンタジックな場面もあるが、それがとても印象的で良かった。珍しく素直に読めた。涼子の心理には影響大なのだが、事実関係がそれに左右されていないのもいい。
プラハで涼子に付いたガイドの青年・ジェニャック。彼の存在が凄く良い。何の手違いか、ガイドのくせに日本語も英語も話せず、涼子とは全く会話が成立しない。その上、”リョウコ”という発音すら覚えられず「リリ」と彼女のことを呼ぶ。シャイだしちょっと頼りない感じなのだが、誠実で温かくて、涼子だけでなくこちらまでもホッとさせてくれる存在なのだ。
ラストはとても地味だ。
でも、澱のように物語の根底にいつもたゆたっていた冷気が、一気に温かい空気に払拭されるような、そんな感動的で余韻の残るラストになっている。
この作品でも<数式>や<数学>が重要な要素になっている。それと、亡き息子が獲得した数々のトロフィーに異常なほど執着する母親。これらは、『博士の愛した数式』や『沈黙博物館』のモチーフに通じているようだ。
どうやらこの作品は、後の小川作品の原点と言って良さそうに思う。
by yuiga28
| 2005-01-27 22:50
| Book 小説