「笑い姫」 皆川博子 文春文庫
2005年 01月 18日
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皆川博子さんの作品は『死の泉』を読んだことがある。独特な雰囲気にびっくりした。幻想的な要素、ホラー的な要素など、妖しい雰囲気もさることながら、同時にヒトラーの異常さには背筋がゾクッとするような恐ろしさを感じさせられた。
その印象が強烈だったので、この作品には始めちょっと面食らった。時代も題材も全然違う。それに、雰囲気もだいぶ違う。
こちらは痛快で、そしてちょっと爽やかな感じさえもする。一口で言えば”うす味”。
しかし、それも『死の泉』に比べればの話で、決して嫌いではない。どころか、読み進むに従ってグイグイと作品の世界に引きずり込まれてしまった。始めはちょっと情けないと思っていた主人公の蘭之助がクールで格好よくさえ思えて来た。
それに、冒険活劇ではあるが、単に派手な筋書きと道具立ての物語というのではなく、ペーソスもある。
時代は水野忠邦の天保の改革の真っ只中。抑圧された息苦しい時代の雰囲気と、権力に翻弄される庶民の憤りや哀しさも描かれている。
それを息もつかせぬ活劇風の物語の中で、その雰囲気を壊す事無く表現しているのは見事。
『死の泉』は良かった。しかし、そのあまりにも強い毒気に当てられ、皆川博子という作家をちょっと敬遠していた。でも、今は他の作品も読んでみようかという気になっている。
TBしています:
「笑い姫」 皆川博子(アジ子のアジは鯵ではない様)
皆川博子さんの作品は『死の泉』を読んだことがある。独特な雰囲気にびっくりした。幻想的な要素、ホラー的な要素など、妖しい雰囲気もさることながら、同時にヒトラーの異常さには背筋がゾクッとするような恐ろしさを感じさせられた。
その印象が強烈だったので、この作品には始めちょっと面食らった。時代も題材も全然違う。それに、雰囲気もだいぶ違う。
こちらは痛快で、そしてちょっと爽やかな感じさえもする。一口で言えば”うす味”。
しかし、それも『死の泉』に比べればの話で、決して嫌いではない。どころか、読み進むに従ってグイグイと作品の世界に引きずり込まれてしまった。始めはちょっと情けないと思っていた主人公の蘭之助がクールで格好よくさえ思えて来た。
それに、冒険活劇ではあるが、単に派手な筋書きと道具立ての物語というのではなく、ペーソスもある。
時代は水野忠邦の天保の改革の真っ只中。抑圧された息苦しい時代の雰囲気と、権力に翻弄される庶民の憤りや哀しさも描かれている。
それを息もつかせぬ活劇風の物語の中で、その雰囲気を壊す事無く表現しているのは見事。
『死の泉』は良かった。しかし、そのあまりにも強い毒気に当てられ、皆川博子という作家をちょっと敬遠していた。でも、今は他の作品も読んでみようかという気になっている。
TBしています:
「笑い姫」 皆川博子(アジ子のアジは鯵ではない様)
by yuiga28
| 2005-01-18 09:47
| Book 歴史